まず従業員に心をくばる
お客様に都合のいいことばかりをサービスとすると従業員にしわ寄せがいくのは当然なのだが、
「こっちは給料払っているんだし仕事だからやってもらわないと」
と、お客様は神様スタイルを要求する店主。
従業員の魂まで給料で買い占めたみたいないい分だが、店主が従業員に対してこのような姿勢でいると、お客様のほうも従業員に対して横暴で当たり前になってくる。
何しろ従業員が萎縮している。
顔色をうかがう接客と丁寧な接客は違う。遠慮がちに下から下からものを言うことが消極的と捉えられたり、商品説明がいい加減だという印象を与えたりして、一見のお客様にも不評となる結果で、お客様に新しい層が増えない。
だから、横暴な常連さんが残る。
そして、横暴な常連さんに違和感を感じて新規のお客様はリピートを避ける。
『あそこは、料理はそれなりに美味しいよ。だけど、主人が若い衆を客の面前でどなったりするから不快でね』
こういうことは、多くの人が不快である。
大事な日や、大切な人、楽しさを分かち合いたい人をそのようなお店に連れて行って、ぎごちない雰囲気になるのは誰だって嫌である。
このようなお店は、固定客や常連さんがついているとなかなか分かりにくいが、店主が従業員に丁寧に接しているお店とは明らかに新規のお客様のつき方が違うのだ。
お客様の前でミスがあったとしても、それを店主が引き受けるのと、従業員をお客様の面前で言葉でムチ打って済ませるのとではお客様の印象は違うし、またその後の従業員の仕事のやり方も違う。
従業員をすっ飛ばして、お客様との信頼云々というのは成り立たないことであり、従業員を単に労働力と思っていい加減な扱いをしていると、思わぬしっぺ返しをくらうこともあるのだ。
「お店を続けるには、お客さんが大事だからね」
そう言う方もいる。
だが、お店をオープンさせるときにはお客様ではなく、従業員をそろえたはずである。よろしく頼むと、一緒に頑張ってくれよと言ったはずだ。
今来ているお客様を大事と思えるだけお店が続いたのは、その従業員たちの頑張りがあったからではないだろうか。
現在、どのお店も苦しい時期だが、苦しい時期だからこそまずは一番近い存在の従業員に気を配り言葉をかけるという姿勢が、お店や組織の耐久力には欠かせないし、そうすることで、表面化していない問題を察知したり、新たな改善策を得る機会が増えることもあるのだから。