飲み会で本音が聞けるのか?
ある夕方、都内で知人とお店をさがして歩いて、広めの大衆酒場に入ったのだが大繁盛で元気いっぱい。活気があるとはこのことで、酒肴も美味しくお客さんもワイワイ。
隣のグループのサラリーマンは課長さんが大はしゃぎだ。
その中にポツンと、無言でいる青年一人。時々の愛想笑いを誰も察してやらないのかと思うくらい彼は浮いていた。
「彼を帰してあげたらいいのに」
「あ~、気の毒だね~」
「・・・なんだか気持ちが寒くなりましたね。お酒にしましょうか、熱くして」
お酒を飲まない、飲めないという人が増えているし、宴席が苦手だという人も多い中
「うち、飲み会が季節ごとにあるんだよ、これ半強制だから」
こういうことを平気で言う責任者や経営者がいるのも事実。
「やっぱり、団結とか仲間意識とか強くなるし、日頃しっかり働いてくれている従業員のためにも、お酒飲んでガス抜きをさせないといけないから」
そういう経営者もいた。
しかし、現場ではガス抜きをさせてもらっている従業員がその経営者に対する不満をぐちぐちいって、連続で離職者がでるのだからあまり効果はないようだ。
「お酒って、やっぱり気持ちが緩くなるじゃないですか。だから社員のね、本音を聞けるわけですよ」
社員の本音を聞いたら、この経営者は怒り心頭だろうし、お酒が入ったくらいで本音が聞けるという感覚が浅いのだ。
「いつも真面目に働いてくれているから、俺は労いの気持ちで食事会をやっている」
という方もいたが、従業員の本音は「休みが欲しい」「時間が欲しい」である。
そこのところをくみ取って、知恵を絞って労わるのが良策であるのに、こういうった経営者は、労わるとは名ばかりで単に飲み会の参加者に緊張を強いているだけなのだ。
明らかにつまらなそうな部下がいたら、体調が悪いのか、お酒が嫌いなのか、うるさいのが嫌なのか、彼女とケンカでもしたのか、飲み会が嫌いなのか、それとも隣の主任のワキガが辛いのかなど、そっと聞き合わせてやり、席を移したり、うまく帰れるような都合をつけてやるのが上策である。
「おぅ、あんまり無理するなよ。お前微熱がありゃせんか?先輩たちに風邪をうつしたら、そのお子さんにうつるからな、奥さん達が迷惑する。お前は先に帰れ」
部下に非難が及ばぬように上手く言ってやって、そっと帰してやることが出来る人が前出の青年の上司にはいないのである。
お酒を飲むから本音が出る、というのはお酒がまわって恐怖心が薄れる、制御が甘くなるというくらいのもので、仕事上において大きくメリットがあるのは、平素から忖度に気疲れさせないで意見を言い合える環境、関係作りだ。
それは、スイーツをいただきながらのティータイムでも出来ないことはない。
まぁ、両方ともに血糖値は気にしてしまうだろうけど。