飲み頃を過ぎたワインの愛しさよ
人生もワインも過ごした時間が味になる。引き返すことは出来ないから今日という時間に後悔のない乾杯をしよう。
酔うほどに飲むほどに明るくなる人と、酔うほどに飲むほどに過去の後悔をひっぱりだしてネガティブな言動を繰り返す人がいる。
この映画の主人公は後者である。
だが、映画は穏やかに楽しく過ぎていく。
性格の違いすぎる長年の友人との友情、美しいぶどう畑の景色、美味しいワイン、元妻への未練、かなわない夢、新しい恋人との出会い。
この主人公のいいところは、ワインが好きで、詳しいということ以外なにひとつ器用にこなせないことだ。
うつ状態であり、自分をポンコツだと強く思い込むこととワイン以外では力を発揮しない。だから、飲むほどに酔うほどにワインが後悔を誘う。
正反対のイケイケの親友がトラブルメーカーではあるが、この親友がいなければ主人公のような状態の人はもっと殻に閉じこもってしまうことだろう。
ずらりとテーブルの上に料理がならぶわけでもないが、女性陣とのレストランでの食事シーンやワイナリー巡り、ハイキングの場面はワイン片手に楽しみたいなと思う。景色も美しい。
さて、この映画の最大の食いつき場面は、失意の中にあるというより、未練の最後の一端を振り切った主人公が大切にしていたワインをバーガーショップに持ち込み、ハンバーガーを流し込むところである。
試してみるとわかるが、フルボディーのワインとバーガーはなかなか合う。
この際にワイングラスでなく紙コップとかのほうがなぜかしっくりくるので、私はわざわざ某バーガー屋さんでドリンクを購入して、中身を移してからワインを注ぎバーガーと共に楽しんだ。
そこまではしたくないという方は、サイゼリヤでワインとハンバーグとガーリックトーストかミニフィセルを頼み一口大のバーガーもどきを作ってワインと楽しむといい。
ハンバーグは、イタリアンかディアボラ風ソースがいいかも。
好みによってサラダを頼み、トマトやレタスを追加ではさんでバリエーションを楽しむのもいい。
料理もワインも金額が高ければ美味しくて当たり前ではあるが、ビンテージものでも悲しみの味しかしない時もあるように、手頃なワインでもとても美味しく楽しめる心の状態がある。
心の鬱積を混ぜ込んで飲むよりも、楽しみを分かち合える人との時間を肴に飲みたいものだ。