平身低頭が当然という異常な感覚
仕事をしていて「かわいそうに・・・・」と言われたことがある人はどのくらいいるだろうか?
私は何度かあるし、そう言われている同僚を見たこともあるが、その現場に居合わせた他のお客様から心底同情的に言われると、みじめなような気がしてくるものだ。
早口で注文して「後で取りに来るから」と支払いを済ませて戻ってきたお客様「なんか注文と違うんじゃね???オレこれ頼んだ?」と言い出したので、 レシートを確認したにもかかわらず、難癖をつけたあげく
「店員がバカだから、まともに注文聞いてねぇんだな」と店舗前でどなり散らされたり、商品の入った袋をお渡しする際にお客様が乱暴に袋を引っぱったので、袋が落ちて商品が散乱
「あんたがしっかり渡さないからでしょう???接客なってないわね!二度とここでは買わないから!!」と大騒ぎされたり。
はかり売りではない商品を「半分で売れ、3分の1で売れ」とごねられて、サービスが悪い、客の立場にたっていない、接客が悪かったとクレームをいれられたり、注文後調理して提供する商品対して「すぐ出せ、3分以内に出せ!!昼の時間がないんだよ!!」とせっつかれたり。
先日は、総菜屋さんの会計にならんでいたら
「なんだぁ!その渡し方はよぉ!!」と怒鳴る声が。やれやれな気分になってしまった。
日本のサービス業の感情労働度合いはなかなか過酷であります。このコロナ禍、マスクにうんざりという人も多いだろうだ、無理な笑顔を強要されないことでホッとしている人も多いのではないだろうかと思います。気遣いを当たり前のサービスとして受け取られ、それが感じられないとクレームにつながったり、あげくに心無い言葉をかけてくる人にも笑顔で丁寧にを求められては、働き手が疲弊しないわけはないのです。
数年前にはこのような感情労働プラス当たり前のサービス残業なども大手の飲食店では起こっていたのです。タイムカードを押して帰らず、再び呼び出されて働くのを待っている・・・待機という呼び方をしていたところもありましたね。現在は改善されているようですが、感情労働の度合いの高さはあまり変わってはいません。
「お客様の怒りはお店の恥だ!!」という考えの経営者もいるようです。
ご来店されたお客には、鷹のような視力をもって気づき、ハウンドドッグのような素早い脚力をもって近づき、お客様が見るのもまぶしいというような笑顔で接客せよと。それが、集客、お店の繁盛につながるという信条のようですが、さて、それだと、コロナ禍でなくても、長く繁盛するのは難しいような気が・・・。
「お客様は神様ではありません。当店のスタッフはお客様の奴隷ではありません」
そういう貼り紙をした焼肉屋さんがあるけれど、ほんと、そうなんです。 なぜ店員というだけで「おい」だの「お前」だの「聞いてんのかこら」とか「トロトロしてんじゃねーよ」とか、そういうことを言われても平気だと思うのか。私は、若い時に随分とその点では反発して、ドロリとした感情的言葉を上司から投げつけられたりもしたけれど、なかなかどうして
「感情労働はサービス業ならやって当たり前だ」という感覚が経営者や現場の責任者にも、消費者側にも根強く残っているなぁと改めて感じる今日この頃です。
ただでも、疲弊気味に働いている仕事がコロナで大変なことになっているという人がたくさんいるサービス業。現場はある意味お客様がいなくてまわっていないのですが、こんなときにこそ、働き手を大事にする姿勢について考えてみるいい機会なのではないかと思います。