ユーモアをつまみに冷えたワインを
キンキンに冷えた白ワインがピッタリの楽しめるヴァカンスとコメディー。
サン=マルク・ビーチにヴァカンスを楽しもうと集まるたくさんの人々、列車もバスもぎゅうぎゅうであるが、主人公のユロ氏は車だ。が、この車が大変にこじんまりしており、時々、破裂音がする趣のある車だ。
この映画に出てくるサン=マルク・ビーチは、サンマルクビーチ フランス で検索をかけると、この映画の主人公の銅像や使われたホテルなどが一緒に映っている画像が沢山でてくる。ちょいと、葛飾柴又の寅さんに近いのかもしれないが、こちらの主人公ユロ氏は、ひょろりとして飄々としている。
この映画とにかく風景がいい。建物の佇まいがいい。
時々通りかかる犬やポニーの生活感のある感じも生活感があって心が和む。
が、もちろん、注目するのは食べものである。
ユロ氏の泊まっているホテルのレストランは、ホールの接客をイマイチ仕事が出来ないギャルソンとそんな従業員を抱えていつも機嫌が悪そうな経営者のメナール氏でまわしているようだ。このレストランでユロ氏は、席に座るなりナイフの匂いを嗅ぐという少し神経質な一面を見せているので、ちょいと匂いに敏感なのかもしれないし、ギャルソンがしっかり拭かなかったのかもしれない。
様々なお客さんをレストランで待つメナール氏が、得意げにローストビーフワゴンのローストビーフをカットしようとするが、これまた足りるのかどうか心細くなる展開で、たしかに、足りそうにない・・・。
しかし、メナール氏におろおろしている暇はない、お客さんはどんどんやってきて、次々に注文が通る。
メロン、腿肉(煮込みだろうか)、定食、ロゼワイン、炭酸水、ミディアムとレアのステーキ、ムール貝のワイン蒸し、海の幸盛り合わせ、4番テーブルにはマヨネーズを追加。
お味のほうはイマイチなのかも知れないが、海で遊べばお腹も空くし、レストランはなかなか盛況である。
羊の腿肉、エスカロップ、4番テーブルにマヨネーズ追加・・・4番はマヨラーである。ここに出てくるエスカロップは、北海道は根室のB級グルメであるエスカロップのことではなく、薄切りのお肉や魚を用いた料理で、お肉や魚の種類は様々。
外では、小さな屋台のアイスクリーム屋が出ている。売っているのは、アイスクリームと冷えたフルーツ。ヴァカンスのお客さんがレストランへ食事に向かうと、アイスクリーム売りのおじさんも、椅子をもってきて屋台に皿を出して食事をする。ポンと置かれたフランスパンをちぎって食べると、アイスクリームを冷やしておく場所から赤ワインのボトルを取り出してグラスに。 ここが、ワインがものすごく飲みたくなる瞬間である。とても美味しそうに見える、そうレストランで食事する人達よりもだ。パルプフィクションでジュールスがバーガーを食べるシーンを見て、バーガーが食べたくなるのに似ている。それくらい、屋台のおじさんとワインはピッタリだ。
この暑苦しさも、先行きの不安もしばし忘れて、チーズやサラミ、フランスパン少々をつまみにしながら、冷えたワインを飲んでユロ氏の巻き起こすとにかく明るく陽気な騒動を楽しんで、ちょいとしたヴァカンス気分を味わってみてはいかが?