カスハラから従業員を守れるか
軽い言いがかりから発展して土下座の要求や店内で怒号が響きわたるような事態になることもあるカスタマーハラスメント。厚生労働省がカスタマーハラスメントの対応マニュアルを策定するほど増加傾向にあります。
カスタマーハラスメントは、顧客による過度なクレーム、理不尽ないいがかり、迷惑行為などがあげられますが、最初から明らかに理不尽で、誰からも迷惑で悪質だと分かりやすいものではなく、とても扱いが微妙な小さなクレームや言いがかりから発展することの方が多かったりするのではないでしょうか。
SNSのクチコミが風評被害にもなりかねないという時代なので、店舗側がどんな言いがかりにも平身低頭、従業員に対してもそのことをミスとして厳重注意なんてことをしていたら、気持ちが疲弊するばかりでお店全体の士気は落ちてしまいます。何よりも、恐ろしいのは、言いがかりの責任というものを激しく追及するお店では、その追求を逃れようと従業員が責任転嫁や隠蔽をすることが増えて、それに慣れてしまうことです。
初めは、理不尽な言いがかりだけを責任逃れ、隠蔽していたものを、他のミスにも使うようになります。これは各ポジションの責任者の立場にも言えることで、このように
理不尽な顧客の理不尽な言いがかりの責任を理不尽に追及すると、責任逃れや隠蔽が常態化した組織になりやすく、気づけば重要なポストの人間ですら保身と利益しか考えていなかった
ということに、後々になって気づくものです。
「言いがかりを言われる方が悪い」と、あるお店のオーナーが堂々と口にしたことがありましたが、これは経営者から従業員への責任転嫁ともいえます。
飲食店でのクレームというものは、その場で誠実に適切に対応していればお客様は不満を残すこともないのですが、言いがかりや微妙なクレームの時点での対応の仕方によっては、感情的になかなか納得いただけない場合もあります。お店側で事前に対策しておくことがとても大事になってきます。
「遅い」「待たせる」という、お客様のイラつきはクレームへの導火線で、とくにワンオペでやっているような店舗では、この手の問題は発生しやすいものです。
「ただいまお時間をいただいています」とワンオペの従業員が対応しても、時すでに遅しなので、お客様に見えやすい場所に表示しておくだけでも、クレームにつながりにくくなります。そんなことをしたら、お客様が来なくなるのではないかという不安があるなら、
その不安にフォーカスする前に従業員の精神的負担に思いを巡らせましょう
いくつか起こりがちなクレームには、事前に対策をして従業員の精神的負担を軽減することにより、良い商品を出すこともでき、接客にも丁寧になれます。
また、何か起こった場合にすぐに上司や責任者に相談やSOSを出せるような風通しの良さはものすごく大事で、そのためには、上司はミスを指摘して責め立て、ネチネチ嫌味を言うためではなく、チーム全体を支え、自分の力不足を補ってくれるために存在するのだというチーム作りが必要でしょう。
カスハラへの対策は、従業員を無視した、単なる対応マニュアルを作るだけでは、良い対策とはいえません。責任者がしっかりとクレーム情報を共有し、判断の難しいケースなどへの対応を身に着けておきましょう。
しっかり準備しておけば、大事な従業員を守ることができます。