気力の支えが必要
コロナ禍の自粛、休業要請から緊急事態宣言が解除されても、
多くの飲食店が、解除と同時に準備万端でスピーディーに立ち上がるということが出来るわけもなく、テイクアウトもやりつつ、様々な対策をしながら通常営業に戻すという様子見の状態がしばらく続くだろう。
そして、自粛休業から
「どっこいしょ!」と立ち上がるパワーが出ず、お店を閉めたり、手放す店主も増えているという。
体力の限界を感じながらも続けていた店主が、コロナの影響を機に閉店を決意というものもあるが、中には気力が戻らないという理由の店主もいる。
大手の居酒屋チェーンが2割近くの店舗を閉めるコロナの影響を考えると
「あがく」ことが無駄、無理と感じてしまうこともあるだろう。
が、閉めたいが閉められないという方もいて、
「気力が戻らない云々でお店を閉められるのは、まだいい方である」という見方もあるようだが、気力はかなり大事なものだと私は思っている。
気力で客足が戻るわけではないが、自粛前の顧客数が一気に戻るわけでもなく、コロナ禍の影響が多大に残る中で何も工夫せずに単に通常営業で再開しても厳しいのは確かだ。工夫にも気力がいる、軽視してはいけない。
気力がなければ、この商いの薄さを凌いでいく工夫は出来ないだろう。
間仕切りや換気の対策を早い時期からして、時短営業とテイクアウトを併用しつつ凌ぐという方法をとる場合は、気力がなければやれない。
テイクアウトはひと手間かかるし、売れ筋メニューを単に詰めて出せばいいというものではない。中には、人気でもテイクアウトに向かない料理もあるのだ。間仕切りをして席の間隔を空けたら満席でも平日の30%程度の入りとなるお店もある。
通常営業の粗利から考えたら、客単価が高いお店がランチの弁当やテイクアウトで得られる粗利で固定費を捻出するのは難しい。協力や助力を得てなんとかやれているお店が多いわけで、気力を保ちつつ、状況をみて一歩一歩進んでいっている。
その一歩一歩の中に工夫がある。
工夫というものはポッとでてきたアイディアだけをいうのではなく、行動力と約束されない成果が出るまでのジリジリしたエネルギーの消耗も込みのものであり、その支えである気力が欠如していては、コロナの影響の有無に関係なく、出来る工夫もできなくなるのは当たり前だろうと思う。
気力をバカにしてはいけない。
先々への不安を皆が抱えているが、不安と焦燥感を往復しているとエネルギーを無駄に消耗してしまう。
答えの出ない不安よりも、商機やお客様との繋がりに目を向けて気力が削がれることを防ぎ、一歩一歩の工夫をすることのほうがこの時期は大事であって、無理にモチベーションだけ上げて、無理な原価設定をしたり、特別メニューをサービスに組んだりしてはいけない。また、感謝セール的な客寄せメニューの乱発するべきではない。
気力と一過性のモチベーションは違うものだ。
ただし、早い時期に休業をしたお店の店主が高齢でもないのに、今月営業再開と同時に気力の衰えを感じるならば、それは多くの場合、体力の低下が起きていると思っていい。こちらは、日々の運動を取り入れることで改善されていく。