値上げというハードルを越えた先は・・・
原材料価格の値上げで、食品が値上がりしている。コロナ禍での輸送費用なども含め、コストが上がる一方である。
食品メーカーも値上げをするのだから、中小規模、個人のお店はなおさら厳しい。スーパーの総菜コーナーでも、ジワリジワリと値段があがってきている。
規制が緩んだとはいえ、飲食店は急に客足が戻るわけではない状況の中で、仕入れ費用の値上がりを受けつつ、これまでと同じ価格で商品を提供していては、収益が少なくなったまま懸念されるコロナ感染の第6波をむかえることにもなりかねない。
一応、規制が緩和された現状のまま第6波がこないにしても、収益減のまま戻りの鈍い客足を頼みにし続けることはかなり頼りない。原材料の値上げはもうされており、客足の戻りを見つつなどという余裕もなく、ことによると必要な仕入れが確保されるのかも分からないというお店もある。
私が、休業明けを楽しみにしていたいくつかのお店は閉店となり、見知ったお店はコストの圧迫から年内の値上げを決めたはいいが、客足が遠のくだろうとため息ばかりついている。
中には値上げした分をサービスで補うかという思考の人もいるが、これはまるきり的外れな考えだ。接客というものが丁寧であるから価格が高いのだということで納得するお客さんはそう多くない。丁寧に接客をしていれば値上げをしてもいい、価格に反映しても大丈夫というなら日本の飲食店はもう少し余裕があるだろう。
美味くて、安くて、サービスがいい。これは消費者にとってはいいことだが、お店側は大変だ。労力がかかる手間を惜しまず、美味しいものを作っているのにその対価が安い場合、従業員が満足するような給料を会社が出せるであろうか???
低価格志向の消費者に向けての価格競争こそが、飲食業界の首にギリギリチョップをぶちかましているわけだが、だからといって、値上げのかわりに今までよりもさらに平身低頭して米つきバッタのように頭を下げれば商品が売れるかというとそんなワケはないのだ。
安ければ売れる、これは少しく正しい。安ければ儲かる、これは大間違い。 まして、サービスがよければ値上げ後も売れるというのも大間違いである。 コロナ禍で、苦しい年月を過ごしたが原材料価格の高騰でさらにハードなパンチをくらっているというのが多くの飲食店の現状ではなかろうか。
あるお店でいい商品ができていたので「たくさん売りましょう」という話をしたところ手頃すぎる価格を責任者が提示したので私が驚くと
「これくらいの価格じゃないと売れませんよ。○○屋さんも近くのスーパーもこれくらいですから」というのである。
いいものを安く売るということが競争に勝つ前提として当たり前になっているし、とても良いことだとされているが、それがお店にも従業員にもこれまで良い結果をだしてきたであろうか?
今まで通りの艱難辛苦に耐える昭和風味の枯れすすき戦法では、乗り切ることが難しくなっている飲食業の構造。この苦境の中で少しでも変化してくれるといいのだけれど・・・。