ほっこり映画を観ながら薬膳スープ
ある日突然現れた見知らぬ人が、名探偵だったり、秘密工作員だったりすることは映画やドラマではよくあることだが、料理人というのはあまりない設定かなと。
この映画は、自分の大ピンチを助けてくれた恩人を探しに上海から来た料理人のチェンとその息子がフィンランドはラップランドのとある村にバスから降りるところからスタートする。
シリカの食堂は、近くの食料品店にツケがたまっているくらいの閑散とした店で、地元の常連のダラけているオジサンたちのたまり場になっている程度である。しかも、シリカは料理があまりうまくない。
ここにやってきたチェン親子をシリカが助け、実は腕のいいシェフであるチェンがこの食堂を手伝うことで色々と展開していくという流れ。どういう経緯でチェンの恩人がチェンを助けたのかとかそういう細かいことは抜きで、美しい風景と、予定調和であろうとも人々の優しき心根を味わう映画。
料理の映像はそれほど多くないけれど、美味しい映画として楽しめます。
この作品でチェンが作る料理が地元の人々の体調をよくしていくという展開があるけれど、自分が食べたものが体を作るというのはやはりあって、薬膳とまではいわないけれど、食の効能というものを考えて食事に取り入れるというのはとてもいいことです。
シルカはちょっと婦人科系に不調があり、チェンから冷たいものと甘いものを控えるようにいわれます。基本は冷やさないこと、砂糖をひかえて炎症をおこしにくくすることなどはよく言われることですね。
でもね、チェンがガチガチの健康オタクの薬膳野郎かというとそうではなく、チェンも酒浸りだった時期があっての現在であって、そのあたりが出す料理にも反映されていると思う。
そんなわけで、シルカの食堂は繁盛し、酒を飲んでたまり場にしていたオジサンたちは元気になり、チェンの息子も楽しく過ごし、チェンもサウナを楽しんむ。
この作品の中で、一番気に入っているシーンは後半に出てくる大きな筏
(いかだ)ボートの上でオジサマたちとチェンが釣りやバーベキューをしながら飲むところ。短いシーンだけど、自然の中で楽しむならこれをやりたいと思わせる筏ボート!!!!これ必見です。
そして、一番気に入っているセリフが、シルカがチェンにいうこの言葉
「社交辞令はダメ、ややこしくなるだけ」
YES!!いつなんどきでも咄嗟に社交辞令や建前が出てしまう癖がつくと、社交辞令が、自分を振り回すようになってきます。
食べ物もそうだけれど、自分の言葉でも自分は作られていくのもの。
ザ・建前社会の日本では誰にでもは難しくても、大切な人には心からの言葉で伝えられるようでいたいものですね。
美味しい料理も、心からの優しさや喜びや労わりの言葉もきっと誰かを幸せににしたり、勇気づけたりするものです。