耐えかねたパワハラ
働いていた会社であわや刃傷沙汰という事件が起きたのは、私がその会社に入社して半年もしない頃だった。
Aさんはすべてを取り仕切るチーフから、長年なにか事があるごとにチクチクと嫌味を言われ、皆が見ている前で理不尽に激しく叱責されることも多くあったようだ。
ある朝、前日の理不尽なチーフの言い分に怒りを抱え続けたAさんは、お酒を飲んで出勤してきたらしい。そして、その朝も習慣のようにAさんにイチャモンに近いような嫌味をねちねちと言い始めたチーフに、手にしていた包丁を向けて激昂したというわけだ。
傷害事件にはならなかったけれど、チーフはもちろん怒り心頭で、
Aさんの解雇を会社に要求したが、そうはならなかった。
「刺しちまえばよかったんだよ~あんな奴は」と別部門の料理人やパートさんに言われるほどにチーフは、習慣的なパワハラを繰り返しており、部下からの人望がなかったことが従業員への聞き取りで明らかになったからだ。
この時に私が聞かれたことは、直接的に私がパワハラを受けていなくても、他の人が罵倒されたり、理不尽な仕事を要求されたりといった場面を見たかということ、また誰かがそうされていることを間接的にでも聞いたことがあるか?ということであった。
この聞き取りのおかげでAさんは解雇されず、異動だけで済み、
チーフは部下への態度を改めるよう上層部にキツく言われた。
私が現場重視の人事や、従業員への聞き取りをオススメするのは、こういう実体験があるからだが、だが、この聞き取りでも改善しにくいのは、全権限をもつトップがパワハラ体質だった場合である。
トップがそうだと周囲は、委縮して耐え忍ぶか、真似て発散するか我慢して爆発するか、耐久力を使い果して疲れて離れていくかになる。
浅井さんの惜しいところは、在職中に改善を要望した従業員の話をきちんと受け止めなかったことだ。部下の諫言にムカッ腹を立てて終わりだったのだろうか。
部下の諫言ほどありがたいものはないのに。
良い作品は見逃さないのに、大事な部下の諫言は見て見ぬふりをしちゃったことが、最大のミスだろう。
自分を変えるいい機会であったのに。
浅井さんだから出来たこと、残せた実績も多くある。
ぜひ改善して、風通しのいい会社にして欲しい。
何かを乗り越えたUPLINKを楽しみにしたい。