とにかく、豆と乾いたパンを食べるのさ
「夕陽のガンマン」ならリー・ヴァン・クリーフが好きだ。
砂埃と汗と銃。
人を殺すのにもったいぶって銃を構えたまま台詞をいうのが日本の時代劇っぽいが、出てくる食事がどうにも違う。旬の感覚はない。
西部開拓時代にはテレワークとかはないので、とにかく肉体労働。パンや豆でお腹をふくらますということが優先だったのだろうか、映画でも豆と乾いた感じの大きなパンと塩漬けの肉類、ローストしたチキンくらいしか基本出てこない。
「ここ最近、少し食事会が続いたせいか少し胃もたれが・・・」などと言う
虚弱体質な課長みたいな男たちは西部劇には出てこない。
暑い中、砂埃に吹かれてお馬さんで揺られ続け、賞金首を探し、命を狙われることもしばしばである。
スイングドアを勢いよく左右に開いてウエスタン・サルーンに行っても
「いらっしゃいませ、おや、初めてのお客様ですね」
「何食べようかな、あっ、大将の今日のオススメある?」みたいなノリはない。
入っていったとたんに向こうから
「金あんのかよ。あるなら豆を食わせてやるぜ」
「黙ってこれ飲んでろ」みたいな接客だ。
賞金狙いもギャンブラーも賞金首も保安官も集まるサルーンは危険がいっぱいだし、人の少ない場所にある小屋みたいなサルーンでの食事のメニューは、
豆スープ
パン(大)
酒
以上、な感じ。
「続・夕陽のガンマン」でも、リー・ヴァン・クリーフがなんだか分からないスープを食べて、ナイフで硬そうなパンを削ぎちぎって食べるシーンがある。水分が少なくて、口の中がカラカラになりそうなパンだ。
「すいませ~ん、お酒の前にお水いいですか?のどがもうカラカラで」とは言わない。たとえその硬いパンで唇の端が切れたとしても、笑顔で手の甲で拭うだけ。それが西部劇。
さて、クリントイーストウッドの渋い顔とリー・ヴァン・クリフの眼光にやられながら食べるなら西部劇ご飯である。
豆はもう煮てある缶詰でいいし、パンもカチカチでいい。
お好きなスパイス、肉は出来れば粗挽きを用意、少々のレバー。香味野菜。
少々のレバー(苦手な人はなくてもいい)を粗く切ったものと粗挽き肉をみじん切りの香味野菜と炒めていくのだが、このときに焦げ付きを恐れてスタートから中火でじわじわやってはいけない。
スパイスはホールがあればテンパリングすればいい、パウダーなら肉を炒める時に加えてもいいし、先に肉に加えて混ぜておいてもいい。
スパイスのテンパリングが終わって肉を炒める時は、ジュージューと強めの火でやり、むやみにかき回さないこと。
ワイルドにいこう、賞金稼ぎは丁寧な料理ををしない(多分)。
私は、にんにくみじん切りとスパイスを先に少々の油で炒めてから肉と野菜を炒める。炒めているときに塩、こしょうを軽く。
煮込みといっても、水分が少な目のほうが、フライパンごとカウボーイが食べてるもったりしたタイプになるし、豆も柔らかくなりすぎない。
ウィスキーやワインを少々加えてもいい。
色々と考えるのが面倒なら、タコスのシーズニングを使えばいいし、おうちのカレー粉とケチャップとソースでもいい。煮込んでいる最中に味を決めようとすると調整が難しいので、水分量があるうちはベースは薄味にしておいて、もったりしてきたら調味料を足していけばいい。作りなれないうちは味見をしながら。辛いのが苦手な人はチリを風味程度に抑えめにして、人参を多く入れると甘みもでてくる。
スーパーなどで売れ残って箱ごと「おつとめ品」になっているようなトマトを賽の目に切っていれてやるのも私は好きだ。
こちらは、塩豚が少し入っている。
きのこ類なども余っていたら入れたらいい。
なにより空腹でもぐもぐ食べたい西部劇めし。