丁寧な暮らしというものは、それなりの年季と根気がいる
私は、コロナのコの字もなかったときは、散歩に行けば必ず書店に寄りました。
女性にオススメの暮らし、生活コーナーには《丁寧に暮らす》ことの指南本が置かれており、ゆったり過ごす、手作りでやさしく暮らす的な内容が多かったと思います。
書店によっては、その隣に《わがままでも愛される》とかの本が置いてあり、両方買うと暮らしぶりと性格の乖離が大きくて大変そうだなとか思ったりもして。
性格と体型が大雑把で大型で血液型がオーガタな私が丁寧に暮らすなどと思い立った日には、きっと日々ガタガタのドッチャンガラガラだろうが、唯一、食事に関してはそれなりに丁寧であろうと思われる。これは、作ることが苦にならないからであるが、食べた分は身にはなるので、丁寧に体重計の電池を抜いて暮らしている。
まぁ、そんなことより映画。
映画「人生フルーツ」は、丁寧に暮らすということの見本のような映画であり、美味しいが感じられる映画だ。
ただ、人生のロールモデルには少しハードであろう。
結婚してしばらくしたら、保険も解約して妻の秀子さんは着物を入れに質屋通い。
数々の都市計画を手掛けて大学教授までやった建築家の修一さんは自由人らしくヨットを趣味として、家計のことは気にせずに妻にずいぶんと支えられていたようだ。
とはいえ、悲壮感はまったくない。
年を重ねても、なんでも自分たちでやる。
畑仕事は土作りからやり、野菜70種を育てる。果実50種は収穫して手作りスイーツやジャムへ、野菜はスープやソースにも。あじの開き、梅干しを干し、ベーコンも手作りする。障子だって自分たちで張り替える。
これが夫婦合わせて177歳になる二人の丁寧な暮らしだ。
特に食事は気をつけているようで、手作りで丁寧だが、凝ってはいない、力んではいない、複雑でもない。これが、出来そうでなかなか出来ない。
食事というものは、誰かと食べるにしろ一人で食べるにしろ
「人を、身体を大事にしたい」と思うと選ぶ材料も調味料も献立も違ってくる。
身体的に豊かな食事を毎日作ることは、めぐってくる旬に合わせて献立を考えていくことに加えて食材の保存、加工が欠かせないので慣れるまでの年季がいるし根気がないと続けられない。
「人生フルーツ」はシンプルで丁寧なスイーツや料理が見られる美味しい映画でもあるが、人を信用して品物を買うという秀子さんの考えや90歳になった建築家の生きざまやその理念に触れることもできる、とても有意義な映画であり・・・観るときっといいことが、気持ちに芽生えますよ。
life-is-fruity.com