厨房すらなかったカフェからのスタート
創業者のマルケッタ・シリングとその夫の夫婦関係(夫の浮気)話から始まるが、それも歴史である。
何の変哲もないどころか、まともな厨房さえなかった海辺のカフェからスタートし、世界一予約の取れないレストランになった「エル・ブリ」の創業から閉店までの歴史を追っていくこの15のエピソードはそれぞれが見ごたえがあり、それぞれの時代に抱えていたお店の問題や目指した変化をじっくりと観ることができる。
もちろん、フェラン・アドリアをはじめ、初代からの料理長や多くの関係者が登場し、様々な角度からの証言がその時代の写真などと一緒に紹介される。
当たり前のことだが、どのようなお店でも創業から有名ということはないのである。
お店の歴史には、人の物語が必ずあり、変革期があり苦境がある。このシリーズでは、
海辺のカフェから世界の「エル・ブリ」に、その時々に関係者がどういうコンセプトをもって取り組んだかが知れるので、大きな学びにもなるし、その情熱にも影響を受けるだろう。
サッカー選手を目指していたフェラン・アドリアが旅費を稼ぐための仕事で得たものが、彼を世界一の料理人にする入り口であるのだから、偶然を軽視してはいけない。
とはいえ、そこから先の彼の運命は、彼の努力なしには勝ち取れないものであり、そういう話をフェラン・アドリア自身がこのシリーズの中で話してくれるので、前のめりに見入ってしまう。
この15のエピソードの中で私のお気に入りは、1日エルブリに密着したエピソード9である。スタッフの出勤、様々な下準備から営業中のレストラン内部が観れるのだ。
とくに、営業中の厨房シーンは緊張感もあり、観ていて飽きない。
「エル・ブリ」の長い歴史が時代ごとに適度な長さでエピソードに分けられており、料理やレストラン関係の仕事を目指す人や、経営者にも学びがあるシリーズでとてもオススメです。
このシリーズはアマゾンプライムビデオから。