名声、賞賛、恐怖と挫折に学ぶ
2010年から2014年の間に4度の世界一に輝いたレストラン「ノーマ」
このドキュメンタリー映画だが、レストランのというよりも、料理人レネ・レゼピのといったほうがいいかもしれない。
日本でも2015年に「マンダリンオリエンタル東京」で期間限定の「ノーマ@東京」が開店したが、予約は1日で埋まり6万人以上がウェイティングリストにのって話題になりましたね。
コペンハーゲンからスタッフ全員で出張なのだからその熱意と思い切りはすごいです。
「北欧料理?!なにそれ?」の状況を一変させ、世界中からコペンハーゲンに美食家たちを訪問させたのが
偉大なシェフ レネ・レゼピですが、彼はマケドニアからデンマークへの移民なんです。
いわれのない人種差別から、ひどい言葉をなげかけられたりもしたようですが、彼の負けん気や料理への情熱が失われることはなかったようで着々実力をつけていき
「ノーマ」は世界のトップへ。
しかし、名声が恐怖を生みます。
「嫌な男に成り下がった」
とレネ・レゼピ自身が語ったように、名声を失うことを恐れる気持ちが強いプレッシャーや情緒的な不安定を彼にもたらします。
独創的な料理を作るという作業は、失敗を繰り返すことでもありリスクでもあります。しかし、名声を得たために彼は外圧というプレッシャー、世間の評価の維持を加味することによって自然体でなくなっていったのかもしれません。
そこに追い打ちをかけるようなノロウィルスの事故。
世界一からの後退。
レネ・レゼピの抱える恐怖は、名声を失う恐怖からお店を失う恐怖へと変わっていきました。
しかし、彼はこの挫折から見事に学び、乗り越えていきます。
失敗や挫折の時に最もしてはいけないことは、外部の評価を気にして消耗すること。
チームを励まし、試作を繰り返し、彼自身に自然体を情熱的に創作する意欲を取り戻していきました。
世間からの賞賛を人生の目標にしても疲弊するだけだ
<レネ・レゼピ>
「ノーマ」も その名が知れ渡るまでは、ウェブサイトもなく電話で予約がとれたお店であったといいます。
そんなときでも、彼の求めたものは料理で情熱や感性を表現することだったでしょう。
賞賛を得てゆさぶられ、挫折を経ていきついた境地。
このドキュメンタリーは、レネ・レゼピの人間的な部分が垣間見えることが多く、料理を見るというよりも、静かに淡々と偉大なる料理人を味わう映画である。
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