燗酒を耳で利く(聴く)味わい
ひとり酒盛りという落語は、いかにも酒飲みの人の落語である。
しかも、あまり酒癖がよくない人が主人公。
友人にいい酒があるから一緒に飲もうというのだが、あれこれ酒の支度を友人にやらせたあげく、結局は主人公がひとりで全部飲んでしまうという噺。
動画で見られるもので比べてみると、
三代目 桂米朝は、なべ焼きうどん
六代目 三遊亭圓生は、中とろの刺身とキュウリの糠漬け
五代目 柳家小さんは、古漬けのナスに刻み生姜をのせたもの
と、お酒のつまみの違いがあります。
柳家小さんの古漬けは、酢豆腐に出てくる古漬けと似ています。さっぱりとお腹にたまらないおつまみですね。
落語家さんによって、まくらで語られるお酒にまつわるエピソードが興味深いときもあります。
六代目 笑福亭松鶴は、五代目 古今亭志ん生の酒の飲み方を一人でチビチビと陰気にといい、八代目 桂文楽の飲み方を大勢でワーワーと陽気にと話してらっしゃいました。なるほど、六代目三遊亭圓生も、
「文楽さんは酔うと人の背中を笑いながらバシバシ叩くクセがあった」と話していました。
古今亭志ん生は、お蕎麦であれお寿司であれ、お酒のつまみという感覚があったようで、飲みながらたくさん食べ物をとることを嫌がったと、息子の古今亭志ん朝もいっていました。
なるほど、唐桟縞の綿入れを羽織って、チビリチビリのひとり酒が似合うのは志ん生だろうなと思います。
ひとり酒盛りという落語は、燗酒を飲むのですが、お燗のつかり具合の違いや1合、2合と飲みすすめていくときの酔い方が見どころ、聞きどころでもあります。
しかし、落語に合わせて20~30分で5合近くのお酒を飲むのは大変なことになるでしょうから、ここはチビリチビリをオススメします。
ぜひ、上燗で!