新しい視点を得ることで生まれる余裕
私は説明書とFAQを読むのが好きだ。
説明書は文字通り。FAQは企業側がユーザー側から頻出すると予測した質問と回答がセットになっているHPでみる「よくある質問」である。
FAQは「ここはちょと分かりにくいよね」や「この不具合は時々あるよ」
という一定レベルの疑問や問題をユーザー側に立ってあぶりだす必要があるのだが、ひとつひとつに回答も出せなければいけない。
問題や疑問を想定して回答するこのFAQを飲食店では従業員むけに作ることで効率化に役立てることが出来る。
前回、極論をいえば、従業員に楽をさせるのが効率であるということを書いた。
これは怠慢でいいとか、手抜きでいいという意味の楽ではない。
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責任感ややる気といったものに重きをおいて、生産性の低い仕事内容に終始させたあげく、逆効果の怠慢、手抜き、注意散漫などが蔓延するようでは、目に見える効果は・・・お客さんを減らすことぐらいになるだろう。
で、あるなら効率を上げてこの逆をいくことである。
効率を上げるには、仕事の基準が明確であったほうがいい。
味や作業の基準が何事も曖昧であるため「まぁ、こんな感じでいいか」となってしまい、それが「いつものこと」になってしまうと、基準はどんどん下振れしてしまう。
基準は時間、重さ、温度など数字で定められることがあるならそれを設定していく。沸騰という状態も人によって判断が違うのだから、見た目なども含めた明確な基準を作ることができれば基準の下振れミスは減らせる。
味の低下や商品の出来不出来のばらつきを防ぐためにも基準はしっかり基礎を作って共有するべきなのだ。
そして、この基準をつくる時に従業員に向けたFAQを作る要領でやると大変便利である。
生産性の低い現場というのは「どうすればいいですか?」が多くて、しかも
なかなか解決されない。これが足をひっぱるのだ。
この時すでに従業員がいれば、作業でやりにくさを感じていることや、なくてもいい仕事、時間をずらしてやったほうがいい仕事、曖昧で基準が分かりにくい仕事、負担に感じている仕事などを従業員が発言しやすい状態で意見を求めて役立てると効率をさらに高めることが出来る。もちろん、従業員が面倒だと感じていても必要な作業はある。手抜きはあまりに手数が多いために起きるか、その仕事にかかる時にすでに従業員が消耗しているか、その仕事を仕上げるまでの工程がきちんと整理されていないために起きるが、それならば、いかにやり易いようにするかを考え、やり方を改良し従業員の負担を軽減していけば手抜きは減っていく。
「楽」を提供して生産性を上げて、ミスや質の低下を防ぐのは、すべてお客様とお店のためになることである。
ちょっとした空き時間や、暇な時間に「仕事をするふり」を強要しているようなお店は、責任者が従業員とコミュニケーションがとれていなかったり軋轢がある場合が多い。従業員からの意見さへ表面的にしか聞き取りはできないだろう。
責任者の考え方が、時給分だけ働いてもらうというようなものでは、効率というものの捉え方が違うようだ。最後の一滴まで油を搾り取るような働き方をさせていれば離職率が高くなるだけで、それで売り上げが上がるわけでも、責任者の待遇がよくなるわけでもないのだが、なんだか怒ってるみたいに仕事を詰め込む。さっきも拭いたであろう手洗いの鏡を拭きながら従業員がため息をつくのが時給分であると思うような責任者には、この効率化は難しいだろう。
「今までそうやってきたから、そのままのほうがある意味で楽だ」
これは効率化するにあたり改善点を書きだしたりすると責任者からもれてくる言葉である。
お店も従業員もなんとなくかったるい疲労感を漂わせて、誰かしらに不満があり、頑張っているのに報われないという雰囲気のどこが「楽」なのか分からないが、慣れとはそうしたもののようだ。だが、そんなものを維持していても 売り上げが上がるわけでもましてお客様が増えるわけでもない。
新型コロナに関係なく、無駄な手間と気持ちの消耗、惰性で下振れしてきた基準を抱えていることはリスクである。
従業員むけにFAQを作る中で、基準やその管理、維持についての疑問が出てくるはずだ。そのひとつひとつに店主や責任者が効率的で具体的な解決法を考えていくという作業は、なかなか面倒で、手間のかかることなのでやりたがらない、やろうとしてやめる人が大半であろうと思うが、きっと結果に結びつく有意義なものになると約束できるので試してみて欲しい。
お客様とお店、従業員とお店がWINーWINになれる効率化に着手することは仕事、商品、時間、スペースを見直して余裕をつくりだすことができるはずだ。その余裕をいかに活用するかも大事なポイントだが、続きは次回に。