食卓の調和と人生の混乱期
食べるの好き、そして料理が好きが12才の少年エイブは、ちょいと複雑な血縁のおかげで、誕生日に楽しく家族で食卓を囲むことができなかった。
皆さんは、楽しい食卓を囲んだ記憶はあるだろうが、最低な気分で囲んだ食卓のほうは憶えているだろうか?
この映画の主人公エイブは、気の毒な食卓を囲んでいる。
この映画に出てくるストリートフードのシェフであるチコがエイブに
「気分がよくない時は料理をするな」と言う場面があるが、これはホントで、ロクなことにならない。
そして、気分がよくない展開になりそうな相手や、自分の気持ちが荒んでいるようなとき、イライラしているときに、誰かと無理に食卓を囲むというのは相手や周りの方が迷惑する。
エイブの両親とその家族が集まると、ユダヤかムスリムに分かれての宗教、政治の話で食卓の上を楽しくない雰囲気が覆うのだから、子供にはたまったものではない。食のすすまない食卓というものが、この映画には出てくるわけで、美味しい映画の中ではイマイチというのが正直な感想だ。食欲がわくというよりも、エイブの幸せを願うことで満たされる。
チコと店のスタッフが料理の仕込みをする場面で手元が映るが、ストリートフードのお店らしく、かなり大雑把で好ましい。コロナ禍でストリートフードをのんびり散歩しながら楽しむなんてことが出来ないので、時々映るストリートフードのお店の場面は心が浮き立った。
シェフのチコから5つの基本の味を教わるときに、最後にUMAMIという言葉が出てくるが、これ、1985年から公式用語になっているけど、味覚として人間がUMAMIを感じるんだよーってのは、2000年に入ってから発見されたもの。
それで、このUMAMIってのは何かというと、グルタミン酸、イノシン酸やらグアニル酸で、単独で使うよりも合わせて使ったほうがもっと美味しくなるのですよ。分かりやすくいうと、肉(イノシン酸)+野菜(グルタミン酸)で野菜炒めを作るとこれももちろん美味しいんだけど、グアニル酸を持つエノキや干しシイタケを加えたり、ここに鰹出汁(イノシン酸)や昆布出汁(グルタミン酸)をちょいと加えても美味しいよってこと。
いちいち炒め物に出汁をとる必要はなく、粉末の出汁でOK。味もまとまりやすく、UMAMIも増してとても便利で、簡単に美味しくなる。
映画の中のセリフにもあるように料理は調和(フュージョン)だが、このコロナ禍で多くの人がコンフュージョン(混乱)を起こしている。そりゃそうでしょう。
だからこそ、食卓には、愛と調和と美味しい糧を!!!
笑顔で穏やかに食卓が囲めるというのは、ホント幸せなことです。