人への思いを味にする料理人
大洪水で両親をなくし、幼馴染とも生き別れた主人公が料理屋の女将に助けられ、その後江戸の蕎麦屋に引き取られて料理人として試行錯誤しながら成長していくというストーリー(もの凄く端折ってます)。
幼馴染とのゆるぎない友情、人の優しさ、そして心意気。笑いあり、涙ありで全体的には和やかな作品。
原作はこちら
既刊本紹介 | みをつくし料理帖/髙田郁 (kadokawaharuki.co.jp)
オープニングの牡蠣の白みその小鍋立てから美味しいに決まっている佇まいだし、道具類にもこだわりがあっていい。
なんというか、味わって大切なものとして食事をとりたくなる映画である。 もちろん、出てくる料理はどれも美味しそうであり、美しい。
幼い主人公が災害後に空腹から通りに出ていた屋台の寿司に手を出してそこの主人から足蹴にされるところを通りかかった料理屋の女将に助けられるシーンがあるが、
「情けないことして」と女将はいう。
屋台の主人は「こっちも商売だから」という。
この「商売」という言葉に女将はお金を屋台の主人にお金は渡すが、商品は受け取らない。料理は料理人の器量次第だから、食べる価値がないというわけだ。
料理人の器量かぁ、カッコイイなぁとなるセリフだけれど、私は女将がかちんときたのは「商売」という言葉のほうではないのかと思っている。
食品偽装の事件なども器量の問題ではなく「商売」の問題である。数を売るなら営業して販路を広げたりするのが「商売」の手段だが、偽装して質を下げて粗利をむさぼるというのは「商売」の手段ではない。
空腹の子供が商売物に手をだしたのを暴力で片づけるのが「商売」かといえば大違いであり、人の空腹を満たすのが仕事の料理人が「商売」を建前に人情のないことをするのに腹が立ったんではないかと。金を払って料理を口にしない女将の行為を屈辱と受け取るかどうかは、屋台の主人の器量次第だろうが。
そんなことはさておき、俳優陣も豪華で絶妙なかけあいがたまらない。 多分もうセーラー服を着ないであろう薬師丸ひろ子を筆頭に晴れ時々殺人に巻き込まれる渡辺典子、スローにブギってた浅野温子、天と地を駆け抜けた探偵ライター榎木孝明、キャバレーでサックス吹いてた野村宏伸、復活したり呪い村に行ったりした永島敏行、フケがでまくる名探偵石坂浩二などなど角川映画に出ていた人々が出てきてちょいと懐かしくもある。
一番好きなのは、もちろん鹿賀丈史さん。野獣死すべしでお客さんをしっかり殴るキレたボーイ役は最高ですよ。素晴らしき舞台人。
あっ!みおつくし料理帖のことだった
茶碗蒸しで飲むのもおつですが、玉子の黄身の味噌漬けは、晩酌のお供にぴったりです。みそは面倒だという方は醤油漬けでも美味しいです。
贅沢なTKGもいいですし、生の魚介にあわせてもいいものですよ~。
みおつくし料理帖、ちょいとぬる燗を飲みながら味わいたくなる作品です。