アリストテレスが料理をしたら面白かろう
私が幼少期を過ごした町内では、共有していた枯葉や庭木の枝を燃やすための手作りのゴミ焼き場があった。火はかなり身近なもので、友人たちと食材を持ち寄って近くの畑、河原などでも焚火をしたし、祖母の家の小さな庭でも私ひとり焚火をしたことがある。
当時の大人もよく平気で火を扱わせていたなと思うけれど、周囲に大人の目が必ずあったからかもしれないが、肥後守という折りたたみナイフを持って遊んでいる者がいたり、焚火をしているときに、そばにある藁を火にくべてその煙の出る火であぶった魚肉ソーセージが美味しいとかなんだとか言いながらいい気になってくべていると、さっと燃えた藁がふいと風に乗って服についたりして、10歳以下の子供たちが集まって火を相手にするのだから、今考えると、なかなかデンジャラスな遊び方であったと思う。
そういう経験からか、火が好きである。火が苦手という人はなかなか料理人にはならないだろうが、人間以外の動物が食材を温めることはないのだから、火を扱うことは、人間が生きるために不可欠な食事と密接な関係にある・・・・ 大げさに言えばそうなるだろう。
火、水、土、風(空気)が万物の根源であるという四大元素の思想は、物質観としては荒っぽいのだけれど、生命体としてはこれなくしてはどうしようもない。天からの恵みで育まれたものを食べている、それで生きているというのは間違いないことなのだけれど、便利便利の世の中でつい食べ物が勝手にわいて出てきたような錯覚に陥る人も多いのではないだろうか。ポテトチップス一枚だって、四大元素がなければ作ることはできない。
四大元素をテーマにし食にかかわるドキュメンタリー
Cooked:人間は料理をする
この作品はとてもオススメです。
それぞれのテーマに調理法あり、科学、文化的な面での考察ありで料理好きな人も、食べるだけが好きな人も、美食家さんもジャンクフード派の人もヘルシー志向の人も楽しめると思います。
作品中でも触れられている、とっくの昔に我々が忘れてしまった料理することの恩恵を私はわりと考えて料理を作ることがあります。とくに煮物とか作るときには、料理することの基本的で最大の恩恵を、食材、とくにゴボウあたりを切ってると感じます。
それは長時間の咀嚼からの解放、消化の負担の軽減。
そんなこと考えたこともないなって思ったら、ぜひご覧ください。
違う視点で食をとらえると不思議と味覚の広がりがあるもので、いままで何気なく食べていたものの中に、これまでより多くの四大元素を感じることができるとともに、多くの恵みを味わうきっかけにもなるでしょう。
四大元素といえば、アリストテレス。彼はとくにセミの幼虫が好きだったようですね。現代にアリストテレスがいて得意料理はと聞かれたら、セミの幼虫のフライとかになるのかなぁ。