従業員の感情的消耗を軽減したいなら
ツイッターで話題になっていた「感情労働」
数年前から耳にすることがあり、また、自分が以前から感じていたサービス業における精神的な負担を見事に表した言葉であり、概念でもある。
感情労働(かんじょうろうどう、英: Emotional labor)とは、感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと[1]。肉体や頭脳だけでなく「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要」である労働を意味する。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サービス業の職種も色々だが、サービス業というと精神的な負担は大なり小なり仕方ないという考えがある人が多い。居酒屋の店長にラグジュアリーホテルのコンシェルジュ並みの対応を要求している酔客をみるとため息が出るというかなんというか。
私がたまに行くスーパーは、一定時間がくると売り場の清掃や消毒をするクリーンタイムがある。たまに行くといっても行く時間は大体決まっていて、いつもそのクリーンタイムにぶつかるのだが、若い従業員さんにいつも同じお客さんが説教のようなことを言っているのを見かける。以前に説教したことがあるのだろう
「おぉ、だいぶ掃除が上手くなったじゃねーかよ」から始まって「掃除にもやり方があるんだよ・・・・・」と話す。従業員さんは「はい、はい、ありがとうございます」と頭を下げて掃除をしようとするのだが、なかなか作業をさせてくれないくらいお客さんは話しかけている。
別のスーパーでは、商品を読み上げてバーコードを通し、商品を重ねることなくカゴに配置しろと従業員に命令するお客さんがいたこともある。このお客さんも何度もみかける。
よくスーパーには「店長への意見箱」などというものが設置されているが、まずは自分の仲間である従業員たちの意見を聞いてやれといいたくなる出来事だ。
こういうことは、お客さん側もそして従業員として働く側も
「サービス業や接客業にはある程度の感情的な負担は仕方ない」
という考えが少なからずあるから起きることなのだろう。しかし、それが働く側の首をじわじわと絞めつけてきている。
心頭滅却すればクレームもモンスターも涼しい気分でやり過ごせるのであろうが、そのような修行は多くの人間に向いていないものだ。
【現場のクレーム処理は大騒ぎしないこと】
お客さん側が間違えた商品をカゴに入れていたのに、金額が違うと大騒ぎして、ずらりと並ぶレジへの行列が進まない。責任者はまるでレジ担当の従業員の大きなミスのようにお客さんに謝ったりしているが、こういうその場しのぎのやり方で丸く収めようとする責任者は従業員への感情的負担を考えていないことが多い。
そしてこういう責任者は小さなことで大騒ぎする従業員を育てる。
復旧の見通しがついていない事故で電車が止まっているのに「何故?」とか「どうして」と繰り返し言いつのって騒ぎだけ大きくする輩である。
最も生産性が悪い人材で、しかも問題解決の才に長けていない。
妙な憤り方をして過剰な要求をしてくるお客さん
↓
ミスで大騒ぎしてしまう従業員
↓
国家の危機のように騒ぎ立てる責任者
というコンボを見たことがあるが、もう感情労働ここに極まれりという風景で、ある意味これが現代日本の本物の「もののあはれ」ではないかとさえ感じた。500円の唐揚げが遅れて出て、しかも冷めていたということで、反社会勢力の出入りなみに騒ぎ立てるお客さんと従業員を引き連れて、全員で切腹する気概で謝罪する責任者をもし西行法師がご覧になっていたならば、きっと涙を流したであろうと思う。
こういう場合お客さんを逃したくないがために、過剰な感情労働を従業員に強いるのは、ほとんどプラスには働かない。責任者はお客さんの不快を取り除くために、適切ないくつかの方法を考えなければならないが、それは日頃から用意しておくべきだ。お客さん側からの評判ばかりを気にして怯えてつねに緊張しているより、心理的に安心なミスしたときの「作戦Bプラン」を用意しておけば、切腹覚悟な謝罪などは無用である。
「作戦Bプラン」がダメだったら?土下座を要求されたり、池で泳いでいる金魚を活け造りにしろとか、飾り物の三味線で香水を弾き語りしろとか言われたら???
これは人によって選択が違うだろう。私だったら、金魚と土下座は帰ってもらうだろうが、三味線ならやってみるかもしれない(笑)
店舗側のミスに油を注いで、特大のキャンプファイヤーにしてしまうのは、初動の遅さである。責任者と従業員の関係作り次第で、ここは大きく差がでてくるところ。
「お客様へのお声がけ」よりも先に日頃の従業員への言葉を選んだお声がけこそが、ミスをしたときや問題が起きたときの解決力をスピーディーにしてくれるし、感情的な負担もとても少なくて済む。
感情労働のマイナス面は、顧客と接する従業員の感情的負担だけではない。
感情労働という分野で働く人を支配的なやり方で管理することは、従業員の感情的な消耗をさらに増加させることにつながるが、サーバントリーダーシップをとることで、少しはそれを軽減できる。
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