手に取れないけれど、私のお気にいり
ひと昔前・・・
「体調はどうですか?」
「お薬はちゃんと飲んでる?お薬の効果はどう?」
「何か変わったことはありますか」
「よく眠れている?」
「何か質問はありますか?」
まぁ、まずこのあたりだろうな・・・月に一度の心療内科のドクターの診療というのか、面談というかのシュミレーションを待合室の椅子に座ってやっていた。私の両隣の患者さんは、左は号泣、右はシクシクと泣き続けていて、私はオセロの四隅にひっくり返らずに残っている石みたいなっていた。
そして、大体はシュミレーション通りのように事が運び、来月の予約をとって、薬局に行き処方箋を出すとザラザラと薬をくれた。
しかし、毎回同じ質問では飽きるだろうと、ドクターが趣味の話しをしたことがあった。
「タフジさん、好きなものや趣味はないの?」
そのときどう返答したのか記憶にないが、ドクター自身の趣味について話しを聞いたことは覚えている。好きなものに囲まれると気分がいいよみたいな話しもしていたような・・・この時の診療時間は少し長くなったので、ドアの外の号泣さんとシクシクさんの和音が急かすように聞こえたもだ。
好きなものに囲まれて暮らす。なるだけお気に入りのものを身近に置くというのは、気持ちの面でもいいことらしい。
ときめくとか、運が良くなるとか、中には波動が上がるとかいう人もいる。 とにかく、自分がご機嫌で気分よく過ごせるようにした方がいいというわけだ。
好きなモノに囲まれる場所は、気持ちをリセットしたり、癒しの効果も大きい。
仕事で何かあったり、人間関係で何かあったり、人生でつんのめって転んだりしたときに、とにかくホッとできて、気分を落ち着かせる空間があったほうがいいに決まっている。
それがキッチンだという人もいる。
気に入った食器に、こだわりの器具、使いこなせる道具たち。
料理を作っていくうちに、気持ちが落ち着いてきて客観的になり、自分の言動や考えの行き過ぎを発見したりもできるし、作った料理を食べてお腹いっぱいになると、相手にも自分にも寛容になれるというわけだ。
好きなもの、お気に入りのものに囲まれての料理といえば!!
音楽もいいよね~。
私は、落語を聞きながら料理をすることがありますが、噺がわりと長い 「芝浜」などは、作り終わってすでに食べ始めいて、サゲの
「よそう、夢になるといけねぇ」というところで
「よそう、デブになるといけねぇ・・・いや、もう遅いか」などと言いつつ おかわりをするという調子です(笑)。
私のキッチン道具は、シンプルで大したこだわりもありませんが、キッチンのすぐそばのドアを開けてベランダに出て、ドアを背にして少ししゃがむと目の前にドンと見えるオリオン座。
これが、私のお気に入りで、大好きなもの。
手に取れず、部屋の中にも置けないけれど、何度も乾杯をして、何度も味噌汁や紅茶の湯気越しに見上げてきた。
私の号泣とシクシクを最も多く、そして静かに見守ってくれた星たちをベランダから眺めながら、今日も食うて笑うの準備です!
YouTubeで一気見できますよ~
料理も主人公もホンワカしていて、癒されますなぁ