気合のはいった店主たちの味わいあるストーリーも
初めての屋台体験は幼稚園くらいの年だろうか。博多の街である。
私の父は、私を抱いた写真が一枚きりという、とても子離れした男であり、 何事も子供にわかるようにという丁寧なタイプではなかった。映画でいうならジブリ映画のような、子供にはわからないことがあって、それをいちいち大人は説明しなくてもいいというスタンスの男である。
「なぜ」「どうして」という質問に「そのうち分かる」としか答えない、そのような父と夜にネオンの明るさと、人混みと屋台の熱気を感じながら歩くのは下手な家族旅行に行くよりずっと楽しかったのは覚えている。
不思議なものは不思議なままで・・・。
ある時喉が渇いたといって、もの静かなおじいさんのいる屋台に入って父が酒を飲んだことがあったが、お客さんも静かな雰囲気でちょっと他と違うなと感じた。
「あのお店はほかの店と違うね」というと、父は「味のあるオヤジなんだ」とだけ言った。私はわりと長い間、そのおじいさんは特別な味がするものだと思っていた。もちろん、その「味」という意味はそのうち分かったのだけれど。
さて、屋台の魅力はもう様々あって、美味しさはもちろん、店主のキャラクターもあるだろう。しかし、不味ければどうにもならない。屋台だけに、安いから多少の不味さに目をつぶるということがあるかといえば、案外そんなことはない。
子供のころに何店か行きつけの駄菓子屋があったが、ある日友達が
「あそこの店は最近くじのあたりが出ない」「カステラの砂糖が少ない」と言い出すと仲間は一斉にいかなくなった。金額が同じくらいのお店があれば、盛りが減った、出汁が薄くなった、スープが臭うなど、ちょっとした手抜きや店主の怠慢でお客さんは離れてしまうものである。
ここに出てくる人気屋台の店主たちは、気合の入った人が多いぞ!
最も有名なのは、ストリートグルメのクイーンと私は呼んでいるジェイ・ファイではないだろうか。屋台飯をアレンジし、ミシュランの1つ星をとっている70代でありながら、活力みなぎるシェフである。
日本の大阪、京橋の居酒屋とよさんのご主人もパワフル。
ほかにもインド、インドネシア、台湾、韓国、ベトナム、シンガポール、フィリピンと活気あふれる人気の屋台飯たちとその屋台を営む店主たちの味わいのある物語を見ることができる。ハングリーな奴らがハングリーを相手にのしあがるという面もあり、なかなかエキサイティング。
活気ある人気店の手抜きしない仕込み、丁寧な調理というのはある意味基本であって、料理を作る人なら誰でもができると感じる人がいるかもしれないが、それを続けていくというのは、なかなか大変である。ジェイ・ファイのように単価の高い料理は別にせよ、かなり安いものに対して手間を惜しまないということは、もうこれは人柄というか資質というか、作り手の信念、執着すら感じる。
30分どころか、正確な待ち時間はわからないという行列のできる路上の人気店たち、面白いよ!!
屋台メシといえばこちら!!
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