美味しいを分かち合えるのも幸運
グリーンブック
アカデミー賞の作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞した実話ベースの作品。
黒人差別を扱っている作品だけれど、スパイク・リーやチャドウィック・ボーズマンなど批判的で、わりとアフリカ系アメリカ人からもイマイチな反応であったようだ。これはもう白人側のステレオタイプな描写が・・・・・・。 まぁ、そんなことは映画の好みの問題であり、食いしん坊万々歳なこのブログの関心事は「食」である。
この映画の主人公トニーは粗野で腕っぷしの強いイタリア系、ナイトクラブの用心棒であり、色々な場面を切り抜ける術も心得ている(主に暴力でだが)。トニーは、しばらくの無職期間を乗り切るためにアフリカ系アメリカ人のピアニスト、ドン・シャーリーのコンサートツアーの運転手をやることに。
作品の時代は、有色人種への差別が法に組み込まれている時代である。レストランやホテルだけでなくバス、電車、病院なども。その差別がより厳しい南部へのコンサートツアーなわけで、色々衝突もありながらの・・・というロードムービー。
で、この用心棒あがりのトニーがよく食べる。ホットドッグを26個食べて小遣いを稼ぐあたりも好ましいけれど、一番の場面はこちらでしょう。
ケンタッキー州でケンタッキーフライドチキン!!!
マナーとかそういうことは抜きに、トニーの親父さんの笑いと食への教えはとっても大事。わしづかみしてチキンを食べた手でハンドルを握るのはあまり快適じゃなさそうだけど、食べっぷりは気持ちいい。
モーテルでピザのLサイズを切らずに折りたたんで食べるのもトニーにはサンドウィッチを食べているようなものなんだろうなぁと。
こちらは、2枚重ねをペロリ
こちらもイタリア系の設定でトニーですね
グリーンブックで、ドン・シャーリーの知られたくないことが露見したときの厄介ごとの切り抜け方、その後のトニーの「世の中は複雑だ」って言葉で、彼が単なる粗暴で大食漢のチンピラくずれでないということがわかる。そう、裏方の仕事をやっていると(そこに暴力沙汰など起こらないとしても)つくづく、世の中は色んなベールを被った人々がいるなと思う経験をするものだ。
しかし、どんなベールをかぶっていても、一緒に食べる、食べ物を分け合っているときというのは、満腹感もそれから得られる幸福感も分かち合っているわけで、トニーとドン・シャーリーが長い旅で一緒に食事をしたことがこの二人の長い長い友情に大いに貢献していると私は思っている。